牧野記者韓国はなぜ「負けると分かっていた万博招致」に

 以下は、牧野記者の記事である。

大変に優れた予想図なので、そのまま転載した。営業目的ではないので、ご了解頂きたく思います。

追伸) 「釜山があるPK(釜山・慶尚南道)→「BK」では?釜山はBUSANだから。

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韓国はなぜ「負けると分かっていた万博招致」に血道をあげたのか…予想以上に早く終わるかもしれない「日韓の蜜月」と「徴用工問題復活」の恐怖

牧野 愛博

「資金力が桁違いで、勝負にならない」

11月28日、パリで博覧会国際事務局(BIE)の総会が開かれ、2030年の国際博覧会(万博)の開催地にサウジアラビア・リヤドが選ばれ猛烈な招致活動を続けてきた韓国・釜山は、イタリア・ローマと共に敗れた。25年の大阪・関西万博に象徴されるように、近年は情報発信や経済効果に疑問符がついている万博だが、韓国はなぜ釜山万博の誘致に血眼になったのか。経緯をたどっていくと、尹錫悦政権の危うい現状がそのまま浮き上がる。


韓国は釜山万博を実現するため、懸命の誘致活動を展開した。

2022年7月、男性7人組人気グループ、BTS(防弾少年団)を釜山万博広報大使に任命。同年10月には、釜山で開かれたBTSの無料コンサートに韓国駐在の外交団を多数招待した。韓悳洙首相や朴振外相ら政府高官を次々、パリに派遣して、BIE総会で投票権を持つ国々に働きかけた。尹大統領自身、11月23日にパリに乗り込み、BIEの各国代表らを招いた夕食会を催した。26日には日中韓外相会談を釜山で開催した。サムスン、現代、LGなど韓国の各財閥も担当者をパリに派遣し、誘致活動を展開した。


ただ、2030年は、「石油の次はIT」と考えるサウジアラビアのムハンマド皇太子が主導する構想「サウジビジョン2030」の達成を祝う重要な年だ。サウジはこの構想のため、紅海のアカバ湾の東側に、直線距離170キロ、人口約900万人に達する巨大な近未来都市を建設する総事業費5000億ドルの巨大プロジェクト「NEOM(ネオム)」も展開している。

サウジは韓国との争いに勝利するため、10年、20年単位といった長期の支援事業などをBIE総会の投票権を持つ国々に提案したといううわさが、パリで流れていたという。釜山万博の招致運動に携わった関係者の1人は、投票前から「資金力が桁違いで、勝負にならない」と嘆いていた。

疑問符がつく「万博の誘致」の有効性

ほぼ、「勝負にならない勝負」でありながら、韓国はどうしてここまで釜山万博に入れ込んだのか。

韓国政府元高官は「尹大統領の任期(2022年5月~27年5月)を考えた場合、明るい話題が全くない。予想されるのは、経済危機や与党分裂、北朝鮮の挑発など暗い話ばかりだ。万博誘致決定という外交成果が欲しかったようだ」と語る。ただ、誘致に成功していても、釜山万博が開かれるのは尹大統領の退任後になる。果たして適切な政権浮揚策なのか、緻密な検討があったのかどうか、疑問符がつく。


また、「釜山があるPK(釜山・慶尚南道)での与党支持を固めるためだった」と語る関係者もいる。

PKは保守の金城湯池と呼ばれるTK(大邱・慶尚北道)と比べ、保守の影響力が揺らいでいる地域として知られる。元々は保守地盤だったが、進歩(革新)系の盧武鉉元大統領や文在寅前大統領が釜山を地盤としていたこともあり、近年は進歩支持者が増えている。この関係者によれば、来年春の総選挙での釜山の予想得票率は「保守55%、進歩35%、未定10%」といったところだという。関係者は「釜山に万博を誘致して、有権者にやっぱり保守は頼りになるとアピールしたかった」と指摘する。

しかし、大阪万博でも散々言われていることだが、果たして万博の誘致が地元の人々を熱狂させることになるのだろうか。1851年、ロンドンで開かれた「第1回ロンドン万国博覧会」など、近代の万博は発展する工業技術や東西の文明を紹介する場所として、世界の人々の耳目を集めた。しかし今や一人一人がスマホから世界の情報を簡単に手に入れられる世の中だ。万博が情報発信の起点になる時代は過ぎ去ったと言える。


「決選投票に持ち込めば勝機があるかもしれない」のナゾ論調

「世界的なイベントで地域開発を」という発想を巡っては、韓国はつい最近も痛い目に遭ったばかりだ。韓国・全羅北道で、158カ国・地域から4万3000人の参加者を集めて今年8月1日から12日まで計画されたボーイスカウトの祭典「2023世界スカウトジャンボリー」が、受け入れの不備から大量の離脱者を招いた事件だ。この失敗も「イベントを誘致して地域開発につなげる」という発想が先に立ち、イベントの内容や性格を十分に把握していなかったために起きた人災だという批判が起きた。

大阪・関西万博や東京夏季五輪もそうだが、「国際イベントを誘致すれば、その地元が豊かになる」と期待する人は減っている。ましてや、釜山はすでに2005年、アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議を誘致したほか、毎年10月には釜山国際映画祭も開かれる。すでに「地域開発」「情報発信」では一定の成果を収めた場所であり、有権者が誘致に夢中になるという場所でもない。仮に釜山万博の誘致に成功したからといって、来春の総選挙で与党が有利になるとは言い切れないだろう。


そんな状況で、なぜ最後まで万博誘致にこだわることになったのか。すでに早くから、韓国政府・与党関係者の間では「釜山万博の誘致は難しい」という声が出ていた。実際、BIE総会では1回目の投票でリヤドが119票を獲得。29票の釜山、17票のローマに大差をつけて圧勝した。一方、韓国メディアはBIE総会での投票直前まで、なお期待を持たせる論調が目立った。

どの紙面にもほぼ共通していたのが、「サウジアラビアが優勢だが、上位2都市で争う決選投票に持ち込めば、勝機があるかもしれない」という論調だった。「勝つ自信はほとんどないが、負けるとは言えない」、そんなトーンだ。

そもそもの走り出しにも問題が

尹政権の外交ブレーンの1人が解説する。「尹大統領が誘致に本気になった以上、途中で『やっぱりダメでした』とは言えない。そんなことを言えば、大統領から『俺をだましたのか』と言われ、責任問題に発展する。だから、大統領に敗北するだろうと直言できる人はいない。十分な議論もせずに、釜山万博の誘致に走り出した経緯にも大いに問題があった」と語る。

大いに力を入れ始めたものの成果がなかなかついてこない。2022年11月、サウジのムハンマド皇太子が訪韓した際、韓国主要企業とサウジの政府・機関・企業は幅広い産業分野にわたる26件の契約や覚書(MOU)を交わしたが、その際も「韓国は万博開催をリヤドに譲る代わりに、NEOMなどサウジ関連投資で有利な待遇を受けるよう求めた」などといううわさが韓国政界などで飛び交った。尹政権は疑惑を晴らすため、万博誘致にますますのめり込まざるを得ない悪循環に陥った。こうした歯切れの悪い状況が、メディアに対する「もしかすると逆転勝利もありうる」という事前解説につながったようだ。


状況が厳しくなるなか、保身に走るかのような動きも出始めた。民間誘致委員長を務める崔泰源・大韓商工会議所会頭(SKグループ会長)は11月23日、自身のインスタグラムに、航空機のエコノミー席に座る自身の写真をアップした。韓国各メディアは一斉にこの姿を報じ、「チャーター機で移動するのが普通の財閥トップが、寸暇を惜しんで万博誘致活動に奔走している」などと報じた。

ずさんな政権運営と硬直した体質

中央日報によれば、崔泰源氏は博覧会誘致のために中南米・欧州7ヵ国を視察した後、尹大統領のパリ訪問に合流した。サムスン電子の李在鎔会長、現代自動車グループの鄭義宣会長、LGの具光謨会長らも相次いでパリに入ったという。政界関係筋の1人は投票直前、「これほど大事にしてしまった以上、釜山誘致に失敗すれば、誰かが責任を取らなければいけなくなる。責任追及をかわすため、最後まで頑張ったという姿勢を示したいのだろう」と語っていた。

万博誘致合戦に敗れ去った今、尹錫悦政権に浮かび上がったのは、無理な戦略を立てたずさんな政権運営と、途中で修正が効かない硬直した体質だった。尹大統領の「こうと決めたら、テコでも動かない」という性格が大いに成功したのは、日韓関係の改善と米韓関係の強化だけにとどまっている。万博の問題だけにとどまるのであればまだしも、野党陣営を敵視するばかりで対話を欠きがちな硬直した姿勢は、中間層・浮動層の支持を得られない最大の原因になっている。


また、今回の万博誘致では、財界に過度に頼る保守政権の伝統的な体質が浮き彫りになった。財閥企業は朴槿恵政権当時、平昌冬季五輪への招致を巡り、政財界の癒着があったとして強い非難にさらされた。李在鎔氏も懲役2年6カ月の判決を受け、一時服役した。「もう、政治との関わりはこりごり」(サムスン関係者)とし、サムスン、SK、現代自動車、LGの4財閥系列企業は相次ぎ、全国経済人連合会(全経連)から脱退した。

住宅ローン問題は悪化の一途

ところが、尹政権になり、保守政権のお家芸といえる、財界頼みの姿勢に転換。尹氏は今年3月の訪日など、外遊のたびに財界人を大挙して引き連れ、活発な経済外交を展開した。4財閥系列企業も今年8月、全経連に相次いで復帰した。釜山万博招致を巡る、財界の活発な支援活動も、こうした経緯を踏まえて行われた。

もちろん、その結果、韓国の人々が今、一番関心を寄せている住宅ローンなどの家計負債問題が好転すれば良いものの、事態は逆に悪化の一途をたどっている。

韓国銀行が11月21日に発表した「第3四半期の家計負債(暫定値)」によれば、9月末時点での韓国の家計負債の残高は1875兆6000億ウォン(約214兆円)。史上最高額だった昨年9月末の1871兆1000億ウォンを上回る最悪の結果になった。野党・進歩陣営が政治的に利用して「大企業優遇政策ばかりで、庶民の負担軽減を軽んじている」と尹政権を攻撃するのは目に見えている。場合によっては、朴槿恵政権の時と同じような、「政財界癒着糾弾キャンペーン」が再び起こらないとも限らない。


現在の政治状況から、来春の総選挙で与党・国民の力が議会過半数を得ることはもちろん、比較第1党になるのも相当難しい状況だ。場合によっては、「釜山万博の招致失敗」が、政権発足2年目にして早々に始まるレームダックの号砲になる可能性もある。

日本の岸田文雄政権は日韓関係改善を大いに喜び、尹政権に全幅の信頼を寄せている。同時に進歩勢力にはほとんど目を向けず、日本に招待する韓国関係者の圧倒的多数が保守勢力で占められているのが現状だ。

ところが、韓国政治の今の雰囲気は「次の大統領選での進歩勢力の復活」に向かって流れている。

尹政権になって、「解決した」と安心している日韓徴用工問題でも、原告の一部は、韓国政府による代位弁済の受け取りを拒み続けている。韓国司法は、韓国政府による代位弁済金の供託を認めない判決を出し続けており、このままいけば、いずれ、「日本被告企業の韓国資産の現金化」が復活することになる。韓国司法は政治状況に影響されてきた過去があるため、尹政権が力を失えば、再び、現金化の流れが強まりかねない。日韓の蜜月は予想以上に早く終わるかもしれない。





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